血糖値が高い人は血圧にも要注意!合併症や動脈硬化のリスク
- 糖尿病について
血糖と血圧、いずれも健康診断でチェックされる項目ですが、年々数値が上がってくることが気になる、という方もいるのではないでしょうか。
血糖値が高い人は合併症を引き起こしやすい
血糖値が高い状態は血管へダメージを与えます。
全身の血管が長期にわたって高血糖にさらされることにより、血管は徐々にぼろぼろになっていくのです
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームという病名を耳にしたことがある方は多いと思います。
肥満に加えて、生活習慣病がある場合に、メタボリックシンドロームと診断され、動脈硬化の進みやすい状態と判断されるのです。
メタボリックシンドロームの診断基準の中に、空腹時の血糖値が110mg/dl以上という項目が含まれ、糖尿病という診断に至らないケースでも、肥満と高血糖がある場合には診断されるかもしれません。
動脈硬化の原因に
血糖が高いことは血管へのダメージも強く、長期間にわたって高血糖の状態が続くことで血管のダメージは大きくなり、動脈硬化が進行していきます。
日本人の死因の上位を心臓病、脳血管疾患が占めており、いずれも動脈硬化による病気です。
動脈硬化の進行を抑えることが長生きするための秘訣といえます。
糖尿病
一回の血糖値が高いだけでは糖尿病とは診断されず、1か月の血糖の推移を表すHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)などと合わせて糖尿病と診断されます。
糖尿病の治療をおろそかにした状態が長期間続くと合併症の可能性があり、糖尿病性眼症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症が3大合併症と呼ばれます。
いずれも重症になると、失明や透析など日常生活に大きな影響が出てくることになり、寿命にも影響してくることがわかっています。
血糖値が高いと高血圧にもなりやすい
糖尿病の人は糖尿病のない人に比べて、2倍以上の割合で高血圧をもっていることが知られています。
糖尿病の人の、実に半数程度が高血圧も持ち合わせているのです。
高血糖で血液量が増える
血糖値が高い、血液の糖の濃度が高いときには、人の体は、血液中の糖濃度が高くなりすぎないように薄めようとして、水分量を増やします。
全体の血液の量が増えることで、血管にかかる圧は高くなるため、高血圧の原因となります。
血管の弾力性が失われる
血糖が高いと血管にダメージが出てしまい、血管の弾力は失われていきます。
弾力がない血管は圧がかかりやすく、高血圧になるのです。
どろどろの血液
糖が多く含まれる血液は、いわゆるどろどろの血液です。
粘度の高い血液を押し出すためには高い圧力が必要となるため、高血圧になりやすいと言えます。
肥満の割合が高い
血糖値が高い人は肥満を伴っている方も多く、肥満の方は正常体重の人に比べ、2~3倍程度高血圧になりやすいと言われています。
肥満の方は食事量も多く、必然的に塩分量も増えることで血圧が高くなりやすい状態です。
また、インスリン抵抗性が高いことから血糖値は高くなりやすく、インスリンが多く出されるため、交感神経が刺激されることで血圧も高くなりやすいのです。
腎臓の機能が悪くなる
血糖が高く、糖尿病になっている場合の合併症の一つに、糖尿病性腎症があります。
腎臓の機能が低下してくると、血圧をコントロールするためのホルモンも作られなくなり、血圧は高くなってしまいます。
血圧が高い人は動脈硬化になりやすい
家庭で測る血圧が125/75mmHg以上、病院で測ったときに130/80mmHg以上を高血圧と言います。
高血圧は動脈硬化をきたす大きな要因の一つとしてしられており、そのほかに動脈硬化に影響する要因として脂質異常症、糖尿病、喫煙があげられます。
長期間血圧の高い状態が続くことで、血管へのダメージは少しずつ蓄積され、動脈硬化は進行していきます。
高血圧は症状がない
血圧が高くて「頭が痛い」、「ふらふらする」といった症状を訴える方もいますが、多くの場合は血圧が高いことでの症状はありません。
健診で血圧が高いことを指摘されても、症状がないため放置しておくというケースも。
しかし、症状はないものの確実に血管にダメージを与え続け、気づいたときには動脈硬化により血管はぼろぼろ、心筋梗塞や脳卒中といった病気を発症することが少なくないのです。
動脈硬化により高血圧?
高血圧になると、血管に圧がかかり続けることで血管が傷つき、高い圧に耐えるため血管壁が厚くなることで、動脈硬化が進行していきます。
一方で、動脈硬化をきたした血管は、傷ついたところを修復するために狭くなり、弾力性が失われ、血圧が高くなる要因となるのです。
動脈硬化になってしまうことで考えられるリスク
動脈硬化は全身の動脈に及びますが、特に細い動脈は細くなりやすく、症状や病気の原因になります。
心臓病
心臓の周りを這っている冠動脈という血管は、心臓を動かすために大切な血液を運んでいます。
しかし、血管の直径は大きくても4mm程度ととても細く、動脈硬化が進行すると狭くなり、狭心症、心筋梗塞に至ります。
狭心症とは、血管が狭くなり、血液が乏しくなる状態。
心筋梗塞は血管が詰まり血液が流れなくなることで、心臓の筋肉が死んでしまう状態です。
いずれも胸痛が典型的な症状ですが、冠動脈の重要な部分が突然詰まってしまう心筋梗塞では、そのまま亡くなってしまうこともあります。
脳卒中
脳に血流を運ぶ血管も大切であり、細い血管です。
脳の血管で動脈硬化が進行すると、圧がかかることで一部が風船のように膨れ上がり、瘤となります。
瘤が破けてしまうと脳出血、脳の中の瘤が破ければ脳出血、脳を覆うくも膜の下の血管が破けるとくも膜下出血です。
反対に、脳の血管が詰まってしまうと脳梗塞となり、脳の組織が失われます。
脳出血や脳梗塞で脳の広範囲にダメージが起きてしまうと、後遺症が強く残ってしまう、亡くなるといった結果につながるのです。
下肢動脈硬化
足の血管は心臓や脳の血管に比べ太いですが、動脈硬化の進行が強い方では、足の血管が動脈硬化で狭く、血流が悪くなることで症状が出る方もいます。
足が重だるい、痛いといった症状がおき、間欠性跛行という、歩くと足が痛い、休むとよくなるといった症状が典型的です。
眼底動脈硬化
眼の中にも血管が走っています。
眼科にいくと眼の中をのぞかれますが、眼底の状態を観察しており、血管の状態もわかります。
眼の血管に動脈硬化が及ぶと、軽症では無症状ですが、動脈硬化の起こる部分によっては、視力の低下や物が歪んで見えるといった症状がでてきます。
生活習慣の見直しが予防につながる
高血圧、高血糖は、いずれも生活習慣と密接に関係しています。
生活リズムを整えること、適度な運動やバランスのよい食事、禁煙など、日常生活の中でまずは1つ目標を掲げて、改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
特に食事では、塩分を控えることで血圧のコントロールに、カロリーを控えることで血糖のコントロールになります。
生活習慣が改善すれば肥満の解消にもなり、血圧、血糖値の改善にもつながっていきます。
2週間から1か月、生活習慣の改善に取り組む中で、まったく改善が得られないという場合には医療機関も受診することをお勧めします。
この記事の執筆監修者
木村 眞樹子 先生
(総合内科専門医・循環器内科専門医・日本睡眠学会専門医)
■経歴
都内大学医学部 卒業
大学病院で循環器内科、睡眠科に従事
現在は都内クリニックで訪問診療に従事し、内科・循環器科での診察、治療に取り組む
■所属学会