運動療法について

EXERCISE THERAPY

“ 肥満を解消するだけじゃない ”

運動療法とは

運動は血糖値を下げる効果があります

運動療法がなぜ良いのかは3つの理由に分かれます。まず2型糖尿病の発症要因として肥満、脂質異常症などが挙げられます。そのため運動によってエネルギーを消費すれば、肥満解消 ・抑制が期待できるのです。次に食後1時間頃に運動を行えば、血液中のブドウ糖が効果的に使われるため血糖値を下げる効果があります。

最後に運動を行うことで筋肉が増えれば、インスリンの分泌も良好になるというデータもあります。糖尿病の改善において、運動療法と食事療法はどちらが欠けてもうまくいきません。

運動が血糖値を下げる仕組み

“ どんな運動が効果的? ”

運動療法の種類

血糖値を下げる運動として効果的なのが有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせです。
日々の生活において、この二つの運動を無理なく取り入れていきましょう。
そのためには、ちょっとした工夫が必要です。以下で詳しく解説しています。

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有酸素運動

有酸素運動とは、酸素を体内に取り込むことで筋肉を収縮させるエネルギーに変えていくような運動全般を指します。具体的にはウォーキング、ジョギング、エアロバイク、サイクリング、水泳などです。有酸素運動によって体内のエネルギーを効率よく消費できれば、血糖の上昇が抑えられます。また、継続して行えばインスリンの働きも改善する可能性があります。

効果的な有酸素運動

ウォーキング

ジョギング

サイクリング

運動量の目安

運動はその強さによって、使われるエネルギー源が変化します。おすすめなのは「中等度」レベルの運動療法です。これは早歩きや筋トレにおいて「少し息が上がるが会話できる程度」の運動と定義されています。中等度それ以下の運動は、ブドウ糖と脂肪が効率的に利用されるので血糖コントロールを行う上で役立ちます。少なくとも週に3日以上は運動を続けましょう。もちろん毎日行うことが一番良いので、ライフスタイルの中で体を動かす習慣を付けることが重要になってきます。

運動の強さ
(適度な脈拍数の目安)


49歳以下:120拍/分
50歳以上:100拍/分

運動の頻度


週3日以上・合計150分以上
※3日以上間隔をあけることは避けましょう。

日常にできる工夫

運動と聞くと、まとまった時間が取れないと悩む方は多いようです。しかし、日々の細切れ時間を活用するだけでも効果は見込めます。たとえば意識して早歩きを心がけるだけでもまったく状況は変わります。

  • バス停は一つ手前の駅で降りる。
  • 車を利用する際は、少し遠い所に駐車して歩くことを心がける。
  • エスカレーターやエレベーターではなく階段を使う。
  • 休日はお子さんと積極的に外に出かける。
  • 家事を行う際は体を動かすことを心がける。
  • 休みの日はとりあえず外に出るようにする。
  • 愛犬との散歩回数を増やす、コースを変える。
2

筋力トレーニング(レジスタンス運動)

特定の動作を繰り返し行い、筋肉に抵抗をかける運動をレジスタンス運動と呼びます。具体的には腹筋、スクワット、腕立て伏せ、ダンベル運動などです。筋肉量をアップさせるので、基礎代謝量が上昇し、体がエネルギーを消費しやすい状態になります。

効果的なレジスタンス運動

腹筋

ダンベル

スクワット

運動量の目安

各レジスタンス運動の中から一つ選び、1~3セット(1セットは15回程度)を週に2~3回繰り返します。レジスタンス運動に慣れていない方は、少しずつ回数を増やすのがおすすめです。ただし、高齢の方や虚血性心疾患などのリスクがある患者さんは、激しい運動が適しません。レジスタンス運動を行う場合は必ずかかりつけ医と相談するようにしましょう。

運動の強さ


各レジスタンス運動を1種目選択。
その種目を1~3セットを行う
(1セットは15回程度)。

運動の頻度


週に2~3回行うようにしましょう。

“ こんな時は要注意! ”

運動療法の注意事項

経口血糖降下薬を処方されている方、インスリン療法などを受けている方は注意して運動療法を行う必要があります。
場合によっては運動を行ったことで低血糖になるリスクがあるからです。
そのため独断で運動療法のメニューを決めず、かかりつけ医と相談するようにしましょう。
また、運動療法を行う場合も念のためブドウ糖などを携帯する、
食後に運動を行うことを心がけるなどリスクコントロールを心がけましょう。

運動を制限・避けた方が良い場合

血糖コントロールの状態、合併症の有無によっては運動療法が適さないケースがあります。以下のチェックリストに少しでも当てはまった場合は、通院先の医師に相談しましょう。

  • 骨、関節などにトラブルを抱えている
  • 自律神経障害のリスクがある
  • 網膜症、および眼底出血がある
  • 進行性の腎臓病がある
  • 心臓病、肺の病気が見られる
  • 血糖値が高い(空腹時血糖≧250mg/dL)
  • 合併症により、手足に潰瘍や壊疽(えそ)などがある
  • 合併症により脱水状況、ケトーシスになりやすい

運動を続けることで、合併症が悪化するケースがあります。
また、個々人にベストの運動量や回数は状況によって異なるため、
運動を始める前には必ず主治医と相談するようにしましょう。

その他の治療法

食事療法

薬物療法

この記事の執筆監修者

名和 知久礼 先生

名和 知久礼 先生
(名和内科クリニック 院長)

所属学会:
 日本内科学会
 日本糖尿病学会
 日本内分泌学会
 日本肥満学会

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