血糖コントロールを補助する糖尿病治療薬は、大きく「経口血糖降下薬」と「インスリン注射」の2つに分かれます。
インスリンの効きを良くする、糖の吸収・排泄を調整する、インスリンを補充する、
インスリンを分泌しやすくするなど、それぞれの効果を組み合わせて薬物療法は行われます。
医療技術の進歩により薬の副作用は少なくなってきましたが、それぞれの薬の特徴を知っておくことは大切です。
いわゆる飲み薬です。食事療法と運動療法を続けても、血糖コントロールが適切に行えていない場合に使います。また、経口血糖降下薬は膵臓からインスリンを出す力が残っている方(「インスリン非依存状態」)に適用されます。つまり、多くの場合で2型糖尿病の患者さんへの処方がメインです。
経口血糖降下薬は、それぞれ効能や副作用が異なります。患者さんの病態や合併症の進行度合いに合わせて、選択していきます。
インスリンの分泌を増やす薬
スルホニル
尿素(SU)薬
経口血糖降下薬の中では最も古い歴史を持つ薬剤です。確かな血糖降下作用があるので長い間使われています。一方で、低血糖を引き起こすリスクもあります。そのため、他の薬剤と併用して副作用を抑えるのが特徴です。
速効型インスリン分泌
促進薬(グリニド薬)
インスリンを分泌する膵β細胞に働きかける薬です。スルホニル尿素(SU)薬よりも、薬の吸収・分解が速いことが特徴です。服用から30分~60分後に効果が見られるといったように「即効性」があります。
DPP-4阻害薬
日本では2009年から使われるようになった新しめの経口血糖降下薬です。高血糖状態のときだけ、インスリンの分泌を促すため、低血糖を起こすリスクが低い傾向にあります。ただ、スルホニル尿素(SU)薬と併用する場合などは低血糖のリスクはあるので気をつけましょう。
インスリンの作用を
よくする薬
ビグアナイド薬
ビグアナイド薬は歴史の?い薬です。体重を増やしにくいため、肥満傾向のある2型糖尿病の患者さんにファーストで使われます。低血糖を起こすリスクも少ないのが特徴です。
チアゾリジン薬
筋肉等に糖が取り込まれるのをサポートする働きを持つチアゾリジン薬。肥満傾向の方に適用されることが多い傾向にあります。チアゾリジン薬単体では低血糖を起こす危険性が低いことも特徴の一つです。
糖の吸収と排泄を調整する薬
α-グルコシダーゼ
阻害薬
血糖値の上昇はα-グルコシダーゼという酵素が関係しています。そのため、腸における糖の消化吸収を遅らせることで食後の高血糖を抑えるのがα(アルファ)-グルコシダーゼ阻害薬です。体重が増えにくく、低血糖のリスクも低い傾向にあります。
SGLT2阻害薬
腎臓に作用し、血液中の過剰な糖を尿として排出する薬がSGLT2(エス・ジー・エル・ティー・ツー)阻害薬です。日本では2014年から使われるようになった新しめの薬と言えます。脱水症状、体重の減少などのリスクがあります。
糖尿病治療薬として注射薬を利用する際は、大きく「GLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬」と「インスリン製剤」の2つに分かれています。GLP-1受容体作動薬は、血糖値を下げる働きを持つホルモンを補い、インスリン分泌量を増やします。一方インスリン製剤はインスリンそのものを直接補充する注射薬です。
GLP-1受容体作動薬
飲み薬で血糖コントロールを行っていても、目標の数値まで達しない場合に選択されることが多い注射薬です。GLP-1というホルモンを補えば、「膵臓にあるβ細胞からのインスリン分泌の促進」「グルカゴンの分泌を抑制」「食欲を抑える」などの効果が期待できます。
インスリン注射
文字通りインスリンを直接補充する治療方法です。特に1型糖尿病の場合、インスリンを分泌するβ細胞の機能が損なわれているため必要不可欠です。注射と聞くとネガティブなイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、注射器具の進歩、血糖自己測定器の組み合わせなどによって体への負担を最小限に抑えて治療を受けられるようになってきました。