インスリン注射のこと

INSULIN

“ 1型糖尿病の場合は必須 ”

インスリン注射とは

膵臓から必要なインスリンが十分に出ない、もしくはほとんど分泌されない場合は
外からインスリンを補う必要があります。
インスリン注射は糖尿病の種類、患者さんの状況によって絶対に必要なケースと望ましいケースに分かれます。

インスリン治療が必須な場合


  • インスリンの分泌がほとんど見られない場合
  • 高血糖によって昏睡状態に陥る可能性があるとき
  • 肝臓の障害、腎臓の障害を重いとき
  • 重度の感染症や外傷がある場合
  • 外科手術を行う必要があるとき(中等度以上)
  • 食事療法だけでは血糖コントロールが難しい妊娠糖尿病の患者さん

インスリン治療を
行った方が良い場合


  • インスリンの分泌が芳しくない方
  • 経口血糖降下薬だけでは、血糖コントロールが難しいとき
  • 痩せ型の体質で栄養状態が芳しくない場合
  • 血糖値が上がる治療薬を併用している場合
  • 1型糖尿病の方(緩徐進行型)

“ 病状やライフスタイルに
合わせた ”

インスリン製剤の種類

インスリン製剤は作用する時間・効能によって種類が分かれます。
同じ分類でも使い方が異なることもあるので、患者さんの状態(糖尿病の進行度、合併症の有無など)を加味して、
適したインスリン製剤を決めるのが一般的です。

超速効型


食事直前に自己注射を行い、10~20分で効果が見られるため、即効性があります。食前にインスリンを補給できることから、不規則な食生活をしている方に効果的です。

  • 作用発現時間:10~20分
  • 作用持続時間:3~5時間
  • 投与時間:食事直前

速効型


30分~1時間で効果が見られ、5~8時間継続することから生理的なインスリン追加分泌パターンに近いのが特徴です。そのためレギュラーインスリンとも呼ばれています。

  • 作用発現時間:30分?1時間
  • 作用持続時間:5?8時間
  • 投与時間:食事の約30分前

持効型


インスリンの基礎分泌を補う製剤です。注射後、空腹時血糖の上昇を抑制する効果が約1~2時間で出てきます。ほぼ1日中血糖値を全体的に下げる効果が持続します。

  • 作用発現時間:1~2時間
  • 作用持続時間:約24時間
  • 投与時間:ライフスタイルにより異なる

中間型


インスリンの基礎分泌を補い、効果が持続的に作用するインスリン製剤です。朝食前30分以内に皮下注射を行い、空腹時血糖の上昇を抑制します。

  • 作用発現時間:30分~3時間
  • 作用持続時間:18~24時間
  • 投与時間:朝食前30分以内・朝食直前

混合型


インスリンの基礎分泌、追加分泌の補填を同時に行える混合製剤です。効果の発現までは超速効型に近く、持続時間は中間型インスリン製剤に似たパターンとなります。

  • 作用発現時間:種類により異なる
  • 作用持続時間:15~24時間
  • 投与時間:朝食・夕食の食直前や30分前以内など

配合溶解


超速効型・速効型インスリン製剤と持効型溶解インスリン製剤を組み合わせたタイプです。効果の発現時間は超速効型・速効型、持続時間は持効型インスリンとほぼ同様です。

  • 作用発現時間:種類により異なる
  • 作用持続時間:約24時間
  • 投与時間:食直前1日1回または朝夕食直前の1日2回

“ 自己注射ってどうやるの? ”

インスリン自己注射のポイント

「何回も打たなければいけない」「やり方が難しそう」などのインスリン注射のイメージ。
しかし今では薬の種類も増えて、注射器も進歩していることから快適に注射できるようになってきました。

ポイント①

保管方法

インスリン注射は使用開始前後、種類によって保存方法が異なります。また、使用期限・開封後の使用可能日数も変わるので気をつけましょう。必ずご自身の使っている注射薬がどのようなタイプなのかを、毎回確認する癖をつけることが大切です。

使用開始前の保管場所


未使用のインスリンは冷蔵庫で保管します。(ただし凍結しない場所であること)

使用開始後の保管方法


開封後のインスリンは直射日光の当たらない室内環境で保管しましょう。

ポイント②

注射部位

患者さんの状況によって、インスリンの注射部位は腹部、大腿部、臀部と異なります。これは、注射部位によってインスリンの吸収速度が異なるためです。

また、同じ場所に打ち続けていると、皮膚に炎症が起きたり、むくんだりするため、主治医の指示の元で注射部位を少しずらすことも大切になってきます。注射をする際は必ず手と注射部位を清潔にして行いましょう。

ポイント③

注射の手順

  • Step01
    インスリンを均一に混ぜる

    混濁型インスリンの場合は、均一になるまで(液全体が乳白色になるまで)容器を激しめに10回程度回転させて混ぜ合わせる必要があります。

  • Step02
    注射針を取り付ける

    注射する直前に注射針を装着することを心がけてください。その際に針が曲がらないように、まっすぐ取り付けることが大切です。

  • Step03
    空打ちする

    注射の前には空打ちを行います。これは針先から液が出るのを一滴以上出して確認する行為です。注射器にトラブルがないこと、針の中の空気を除去する効果があります。

  • Step04
    薬剤投与量を設定する

    ダイアルを回して投与したい単位を決めます。この確認作業は正確にする必要があります。丁寧に行いましょう。

  • Step05
    注射する

    注入ボタンを押して注入を始めます。注入ボタンを押したまま、ゆっくり指示された秒数を数え、薬液が漏れないようにします。

    痛みを軽減させるコツ

    • インスリンは室温保管が基本です
    • アルコール綿を使用した後は必ず乾いてから注射するようにしましょう
    • 注射針は短く、細いタイプの使用をおすすめします
    • 必ず毎回新しい注射針を使用することを心がけてください
    • 皮膚に対して直角に打てば痛みが抑えられます
    • 毛根部への注射は避けてください
    • 皮膚に迷わず素早く、針を刺しましょう
    • 薬剤の注入はゆっくり行いましょう
  • Step06
    針を抜く

    針を抜く際は注入ボタンを押したままが基本です。その際、急いで抜かずゆっくりと静かに行いましょう。

  • Step07
    注射針を取り外し、廃棄する

    使用後の注射針は速やかに廃棄しましょう。注射針を装着したままだと、衛生的に問題があるほか、空気が入るので投与量が不正確になるリスクがあります。

“ 副作用に要注意 ”

低血糖について

インスリン療法中は、注射したインスリンが体の中で確実に作用します。
そのため、インスリンの投与量を調整せずに激しい運動を行って、筋肉でのブドウ糖の取り込み率が急上昇したり、
食事を抜いて、ブドウ糖の摂取量が少なくなったりすると低血糖を引き起こすことがあります。
低血糖が起こったら、必ず主治医に報告するようにしましょう。

この記事の執筆監修者

名和 知久礼 先生

名和 知久礼 先生
(名和内科クリニック 院長)

所属学会:
 日本内科学会
 日本糖尿病学会
 日本内分泌学会
 日本肥満学会

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