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見逃されやすい?血糖値スパイクの身体への影響

  • 糖尿病について
食後血糖値のグラフ

血糖値スパイクという言葉を聞き慣れない人もいるかもしれません。

血糖値スパイクとは、食事後に血糖値が急激に上昇し、下降する現象を指します。

あまり知られていないかもしれませんが、さまざまなリスクが潜む現象です。

 

通常の血糖値が正常の範囲内であっても、食後の血糖値の急上昇は起こる場合があるため、健康診断では気づきにくいという特徴があります。

糖尿病にも影響しますが、さまざまな病気を引き起こす可能性も指摘されています。

 

そのため、血糖値の乱高下には注意が必要なのです。

この記事では、初めて知る人でも理解しやすいように、血糖値スパイクの仕組みや症状、注意してほしい点などを解説します。

 

血糖値の乱高下が引き起こす身体の不調

スパイクという言葉は、食後に血糖値のグラフが突然上昇し、同じく突然下がる「とげ」のような形状から由来していると言われています。

通常、血糖値の変動は緩やかなのですが、血糖値スパイクは急激な上昇と急降下をもたらします。

また、血糖値スパイクで食後の血糖値が異常に高いにもかかわらず、空腹時の血糖値は正常だと健康診断などで見逃されることもあり、「隠れ糖尿病」と呼ばれることもあります。

 

血糖値スパイクが起こる原因

血糖値は健康な人でも常に変動しています。

食事をとると糖質が消化され、血液中に取り込まれることで食後の血糖値が上がるのは正常反応です。

さらに、血糖値が上がると、すい臓からインスリンが分泌され、血液中のブドウ糖を細胞に取り込む働きをすることで食後に上がった血糖値は下がり、空腹時には正常値になります。

 

血糖値スパイクは、すい臓の老化や肥満などによってインスリンの分泌が減少したり、分泌するタイミングが遅くなったりすることが原因と言われています。

その結果、細胞がブドウ糖を十分に取り込めず、血糖値が急激に上昇する状態(食後高血糖)が生じます。

そして、急上昇した血糖値を抑えるためにインスリンが分泌されると、血糖値が急速に下がるのです。

 

このような血糖値の乱高下は、血管に損傷を与えることに繋がります。

その結果、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などの突然死のリスクも高まると考えられています。

さらに、血糖値スパイクには他にも危険が潜んでいます。

例えば、自律神経の不調が引き起こされ、イライラや不安、疲労などの症状を引き起こすことがあり、体重増加のリスクが高まる可能性もあります。

 

こんな症状は血糖値スパイクかもしれません

食後に強い眠気に襲われたり、体がだるくなったり、集中力が低下したような経験はありませんか?

もしかすると、血糖値スパイクかもしれません。

すい臓から分泌されたインスリンが、ブドウ糖を細胞に取り込む働きをすることによって血糖値が下がると、眠気やだるさが生じることがあるのです。

また、食事をとると頭痛や吐き気などの症状がでる人もいらっしゃるかもしれません。

低血糖により引き起こされることもありますが、血糖値が急に上昇することで引き起こされる、慢性的な動脈硬化に由来する頭痛の場合もあります。

血糖値スパイクでは特に症状なく経過することが大半ですが食後に身体の不調がある方は血糖値スパイクの可能性を考えてもいいかもしれません。

 

大切なポイントは食事と運動

血糖値スパイクを予防するためには、食事と運動の工夫がポイントになります。

 

食事では、炭水化物を食べる前にタンパク質を含むおかずや、食物繊維の豊富なサラダ、野菜を食べるようにしましょう。

血糖値が上がりやすい炭水化物の吸収が遅くなり、血糖値の急上昇を防ぐことができます。

 

運動も欠かせない要素です。

食後に軽い運動をすると、血糖値や中性脂肪の上昇を抑えることができます。

ウォーキングや階段の上り下りなど、意識して取り入れてみてください。

 

また、筋肉量を増やすことも血糖値スパイクを予防するのに効果があると言われています。

筋肉を鍛えることで、血糖値のコントロールがしやすくなるためです。

 

食事も運動も、日々の習慣として続けることが大切です。

継続するのが難しい場合は、食事内容や運動、体重などを記録してみるとよいでしょう。

自分の体調や結果を振り返りながら、健康な生活を実現していきましょう。

 

食事の際に注意してほしいこと

食事は偏らずにバランスよくとることが大切です。

「パンだけ」や「ラーメンとごはん」など、炭水化物に偏った食事内容では、血糖値が急激に上がる原因になりかねません。

ただし、炭水化物に含まれる糖質は体に必要な栄養素なので、制限しすぎることも良くないでしょう。

 

例えば、白米をもち麦や五穀米に変えたり、パンをライ麦パンに変える、単品ではなくバランスの取れたメニューにする、といった工夫が考えられます。

ご飯の後にデザートとしてお菓子やケーキを食べることも、血糖値の急上昇につながるので注意してください。

 

また、朝食をしっかり食べることも重要です。

食事の回数を減らすと、体が糖分を吸収しやすくなってしまい、血中のブドウ糖が急激に増えることがあります。

きちんと3食とることで、血糖値の乱高下を予防することに繋がります。

 

血糖値スパイクかも?と感じたら

食後に眠くなることが多く、主食中心の食事をしている方は、血糖値スパイクが起こっているかもしれません。

空腹時血糖のみの測定が主な通常の健康診断ではなかなか見つかりにくいのですが、糖尿病の家族歴がある方や気になる方は、人間ドックなどで調べてもらうことも考えてみましょう。

 

血糖値スパイクは血管に悪影響を与え、将来的に糖尿病のリスクを高める可能性があります。

糖尿病に移行しないためには、食事と運動を見直し、血糖値をコントロールすることが重要です。

 

食事内容や食べ方、生活習慣を見直すことが予防に繋がります。

習慣を変えていくのは難しいかもしれませんが、健康のために少しずつ良い習慣を取り入れてみてください。

 

この記事の執筆監修者

木村 眞樹子木村 眞樹子 先生
(総合内科専門医・循環器内科専門医・日本睡眠学会専門医)

 
 
 
 

■経歴

都内大学医学部 卒業

大学病院で循環器内科、睡眠科に従事

現在は都内クリニックで訪問診療に従事し、内科・循環器科での診察、治療に取り組む

■所属学会

日本内科学会

日本睡眠学会

日本循環器学会

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