コラム

COLUMN

カテゴリー:

糖質ゼロのビール|数字に隠れた真実とは

  • 糖尿病について

健康意識の高まりから、糖質ゼロをうたったビールが多く販売されています。

糖質がまったく入っていないのであれば、糖尿病の人が飲んでも健康に影響はないと思いがちですが、本当にそうでしょうか。

 

今回はビールに含まれる糖質や、糖質ゼロビールの本当の意味、さらにはノンアルコールビールと糖尿病の関係についても解説します。

糖尿病に配慮した、ビールとの付き合い方の参考にしてください。

 

ビールには糖質が含まれている

糖質ゼロのビールが多く流通していることからわかるように、もともとビールには多量の糖質が含まれています。

ビールの主原料である麦や副原料の米、とうもろこしなどは糖質が多い食材です。

発酵をコントロールするために、シロップなどの糖類を加える場合もあります。

 

通常のビール1缶(350ml)あたりに含まれる糖質はおよそ11g、ご飯に換算するとおよそ30g、お茶碗約1/5膳と同じくらいの糖質です。

このように比べるとビールの糖質は少なく感じますが、ご飯には糖質以外のたんぱく質や食物繊維などの栄養素が含まれます。

 

一方、ビールには栄養素がほとんど含まれていないだけでなく、体に取り込んだアルコールなどを分解するために栄養素が消費されてしまうのです。

通常のビールは、ほぼ糖質しか含まれていない飲み物と言えるので、糖尿病の人が飲むべきではありません。

 

糖質ゼロという表記の意味

糖質ゼロと書いてあると、糖質がまったく含まれていないように感じるでしょう。

しかし食品表示法の栄養表示基準では、飲料100mlあたりに含まれる糖質が0.5g未満の場合、0gと表示することができるとされています。

つまり糖質ゼロと記載されているビールでも、実際には糖質が含まれている恐れがあるのです。

 

糖質ゼロだからと安心して何杯もビールを飲んでいると、思わぬ量の糖質を摂取しているかもしれません。

糖尿病の患者にとって血糖コントロールは、糖尿病の進行を遅らせて合併症を防ぐためにとても重要です。

 

血糖値は主に食事や飲み物に含まれる糖質の量によって変動するため、どんな食事や飲み物を摂るかは慎重に考えなければなりません。

糖質ゼロという言葉の意味を正しく理解して、糖質ゼロのビールを飲むか否かを判断してください。

 

糖質ゼロでも注意が必要

糖質ゼロのビールには、表示されない糖質以外にも気をつけるべきポイントがあります。

 

ひとつは、ビールの食欲増進効果です。

ビールに含まれる炭酸や、主原料であるホップが持つ苦味は胃を刺激して、胃液の分泌を促します。

胃で食べ物を消化する準備が整うと食欲が引き出されるため、糖質を含む食事やおつまみを食べ過ぎてしまう恐れがあるでしょう。

 

ほとんどの糖質ゼロのビールには、エネルギーが含まれる点にも注意してください。

アルコールは、1gあたり7.1kcalのエネルギーを含んでいます。

糖質の摂取を抑えるつもりで糖質ゼロのビールを飲んだとしても、実は大量のエネルギーを摂取してしまっているかもしれません。

 

エネルギーを取り過ぎて太ってしまうと、血糖値を下げるホルモンの効きが悪くなり、糖尿病を悪化させる可能性があります。

そのため糖尿病治療では血糖コントロールだけでなく、摂取エネルギー量のコントロールも重要です。

 

アルコールは、血糖値にも影響することがわかっています。

アルコールを大量に摂取すると、インスリンと呼ばれる血糖値を下げるホルモンの効きが悪くなる恐れがあります。

 

長期間にわたるアルコール摂取によって生じるのが、膵臓へのダメージです。

膵臓ではインスリンなど血糖値を調整するホルモンが分泌されていますが、アルコールによるダメージを受けるとホルモンの分泌細胞が破壊されて、血糖値のコントロールができなくなる可能性があります。

 

以上のように、糖質ゼロのビールには食欲増進効果、エネルギーやアルコールの取り過ぎといった危険性があることを覚えておいてください。

 

ノンアルコールのビールなら大丈夫か

糖質ゼロのビールに含まれるアルコールが体によくないのであれば、ノンアルコールビールは安全であると思う人もいるでしょう。

しかし、糖質ゼロの表記がされていても糖質が含まれるビールがあるように、ノンアルコールビールと書かれていてもアルコール分が完全に0%であるとは限りません。

 

酒税法ではアルコール分を1%以上含むものを酒類に分類するため、アルコール分1%未満のものは一般的にノンアルコール飲料とされています。

そのためノンアルコールビールと表示されていても、アルコールが微量に含まれる商品が存在するのです。

 

ノンアルコールビールの中には、水あめや果糖ブドウ糖液糖といった糖類を含み糖質が高い商品もあります。

アルコールによるデメリットを回避できたとしても、大量の糖質が含まれるのであれば、糖尿病の人にノンアルコールビールはおすすめできません。

 

ノンアルコールビールに含まれる人工甘味料にも、注意が必要です。

人工甘味料は甘みがありますが、体の中で血糖にならないため摂取しても血糖値には影響しません。

一見、人工甘味料は糖尿病に有効なように感じますが、インスリンの効きを悪くする可能性があると言われています。

 

さらに、少量でも甘みが強い人工甘味料に慣れてしまうと、弱い甘みでは満足できなくなり、強い甘みを求めるあまりに糖質を取り過ぎてしまう傾向も見られています。

ノンアルコールビールと表示されていても、アルコール分や糖質の表示を確認し、飲み過ぎないようにする必要があるでしょう。

 

まとめ

糖尿病治療では、基本的に禁酒が望ましいとされています。

しかし「どうしてもビールが飲みたい」という人は、医師と相談した上で、糖質ゼロのビールやノンアルコールビールを選択肢に加えてください。

ただし表示に惑わされることなく、糖質やエネルギー、アルコールの量を必ず確認してから選ぶようにしましょう。

決して飲み過ぎることなく、適量の摂取を心掛けることも忘れないでください。

糖尿病治療に対応する医院のご紹介

ページトップへ戻る