【医師監修】糖尿病の兆候チェック|初期症状やサインからわかる体の変化を解説
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糖尿病
「最近やたらと喉が渇く」「食事量は変わらないのに体重が減ってきた」と些細な体の変化を見過ごしていませんか。これらの症状は、糖尿病の危険なサインかもしれません。
糖尿病はサイレントキラーと呼ばれ、自覚症状がほとんどないまま静かに進行していく病気です。放置すると、失明や人工透析、足の切断などの深刻な合併症につながる可能性もあります。
この記事では糖尿病の初期症状や合併症、検査方法を詳しく解説します。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、自己判断による診断を推奨するものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
この記事の監修歯科医師

浜野長嶋内科
長嶋 理晴 院長
昭和大学医学部卒業。呼吸器疾患、アレルギー疾患などを扱う内科で、特に糖尿病・脂質異常症などの慢性疾患の診療に従事。薬の処方だけでなく、患者さんが病気と向き合い、体質改善を図るサポートを重視。先代の父の遺志を継ぎ、地域に根ざした医療を提供しています。
目次
糖尿病の7つの初期症状と体の変化
糖尿病の初期症状は、大きく分けて以下の7つです。
①異常な喉の渇き
②頻尿や多尿
③体重の減少
④慢性的な疲労感
⑤傷が治りにくい
⑥視力の低下
⑦手足のしびれ
①異常な喉の渇き
強い喉の渇きは、糖尿病の代表的な初期症状です。
糖尿病になると、血液中のブドウ糖が増えすぎて、体は尿として排出しようとします。尿の排出で大量の水分が失われるため、体が軽い脱水状態になり、脳が「水分を補給しろ」という指令を出して強い喉の渇きを感じます。
以下の状態に当てはまる場合は糖尿病の恐れがあり、注意が必要です。
・以前よりも水分を摂る1日の量が1.5L以上増えた
・水を飲んでも、すぐに喉が渇いてしまう感覚がある
・甘いジュースや炭酸飲料をやたらと飲みたくなる
喉の渇きに加え、多尿などのほかの症状と合わせて見られる方は糖尿病を疑いましょう。
②頻尿や多尿
頻尿や多尿は、尿中の糖を薄めようと体が水分を使うことで生じる糖尿病の初期症状です。
尿中の糖(尿糖)は、健康な人にはほとんどありません。しかし、血糖値が高い状態が続くと、腎臓がブドウ糖を処理しきれず、余った糖が尿の中に出てきます。
尿糖になると尿の濃度が高くなるため、体は薄めようと血管の中から水分を尿へ引き込みます。その結果、尿の量が増える多尿が起こり、トイレの回数も自然と増えます(頻尿)。
これまで夜中にトイレで起きることがなかった人が、何度も目覚めるようになった場合は注意が必要です。喉の渇きと多尿・頻尿は同時に現れることが多く、糖尿病の典型的な初期症状です。
③体重の減少
いつも通り食べているのに体重が減少するのは、糖尿病の危険な症状の一つです。
一般的に糖尿病の人は肥満のイメージがありますが、症状が進むと逆に体重が落ちてしまうことがあります。糖尿病によりインスリンの働きが悪くなると、血液中のブドウ糖を細胞がエネルギー源として取り込めなくなるためです。
糖尿病の人は、血液中に糖が多くあるにもかかわらず、細胞がエネルギー不足で飢餓状態に陥ります。エネルギー不足を補うために、体は筋肉や脂肪を分解してエネルギー源として使い始め、体重が減少します。
④慢性的な疲労感
慢性的な疲労感は、糖尿病によるエネルギー不足が原因です。ブドウ糖は体の大切なエネルギー源ですが、インスリンの働きが弱いと細胞は血液中の糖を取り込めません。
以下のような、慢性的な疲労感を覚えている方は注意が必要です。
・十分に睡眠をとっても、朝から疲れが残っている
・常に体が重く、慢性的なだるさが続く
・少し動いただけで息切れしたり、疲れやすくなったりする
・仕事や家事に集中できず、やる気が出ない
上記の疲労感は、肉体疲労ではなく、血糖値に問題が起きている可能性があります。放置せずに、できるだけ早い専門医への相談が大切です。
⑤傷が治りにくい
糖尿病の初期症状の一つとして、傷が治りにくいこともあります。糖尿病で傷が治りにくくなる理由は、免疫力の低下と血流の悪化です。
血糖値が高い状態が続くと、細菌やウイルスから体を守る白血球の働きが鈍くなります。白血球の働きが鈍くなることで傷口から入った細菌をうまく排除できず、感染が起こりやすくなったり、傷が化膿しやすくなったりします。感染や化膿は傷の治りが遅くなる原因です。
傷の修復には、酸素や栄養、白血球などの免疫細胞が必要です。高血糖によって、血流が悪くなると免疫細胞が十分に届かず、治りが遅くなってしまいます。特に、心臓から遠い足の指などにできた小さな傷が、いつまでも治らない場合は注意が必要です。
⑥視力の低下
急に視界がかすんだり、物が見えにくくなったりする症状は、糖尿病かもしれません。糖尿病による視力低下の原因は、一時的なものと危険な合併症の2種類です。
一時的な視力の低下は、血糖値の変動が原因です。血糖値の急激な変動によって、水晶体がむくんでピントが合いにくくなり、視界がぼやけることがあります。多くの一時的な視力低下は、血糖値が安定すれば改善することが特徴です。
高血糖が続くと網膜の細い血管が傷つき、糖尿病網膜症などの危険な合併症を引き起こす可能性があります。初期症状はほとんどなく、進行すると失明につながることもあるため注意が必要です。
視力低下を単なる目の疲れや老眼と自己判断せず、医療機関へ相談することが大切です。
⑦手足のしびれ
手や足のしびれは、高血糖によって末梢神経がダメージを受ける糖尿病神経障害の初期症状です。
高血糖が続くと、酸素や栄養を神経に届ける細い血管が傷つき、血流が悪くなります。やがて末梢神経に必要な栄養が届かなくなり、神経の働きが弱まります。神経の働きが弱まると、うまく信号を伝えられなくなり、しびれや痛みが生じるでしょう。
以下の症状を感じる場合は、注意が必要です。
・手足の先に、正座を続けたあとのしびれを感じる
・足の裏に一枚、薄い紙が張り付いているような違和感がある
・足がよくつる
・以前より痛みや熱さを感じにくくなった
上記の症状は、神経が傷つき始めているサインかもしれません。早めに医療機関で相談することで、症状の進行を防げます。
糖尿病を放置すると起こる3大合併症
糖尿病を放置すると起こる合併症は、以下の3つです。
①糖尿病網膜症
②糖尿病腎症
③糖尿病神経障害
①糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、高血糖によって網膜の細い血管が傷つき、進行すると失明につながる危険な合併症です。
網膜はカメラのフィルムのような役割を担っており、物を見るために不可欠な組織です。しかし、血糖値が高い状態が続くと、網膜の細い血管がダメージを受け、視力低下を引き起こします。
糖尿病網膜症は、初期はほとんど自覚症状がなく、気づいたときにはすでに進行しているケースも多いです。進行すると以下の症状が現れます。
・視界がかすみ、すりガラス越しに見えるように感じる
・視力が落ちて、文字や顔がぼやけて見える
・視野の中に黒い点や虫のような影が飛んで見える
さらに病状が進行すると、網膜で大きな出血が起きたり、網膜が剥がれたりして、最終的には失明に至る危険性があります。糖尿病網膜症は、日本の成人失明原因の第3位に位置する危険な病気です。(※1)
②糖尿病腎症
糖尿病腎症は、高血糖が原因で腎臓のろ過機能が徐々に失われる合併症であり、進行すると人工透析が必要になります。
腎臓は糸球体と呼ばれる細い血管の集合体で、老廃物を尿として排出する臓器です。高血糖が続くと糸球体の血管が傷つき、腎臓のろ過機能が少しずつ低下します。
糖尿病腎症の初期にはほとんど自覚症状がなく、体内に留まるはずのタンパク質(アルブミン)が、尿の中に漏れ出るようになります。腎臓の機能低下が進行すると、体内の老廃物や余分な水分を十分に排出できなくなり、以下の症状が現れるでしょう。
・手足や顔がパンパンにむくむ
・常に体がだるく、疲れやすい
・貧血によるめまい、息切れ
さらに悪化すると、腎臓の機能がほとんど働かなくなる腎不全に陥ります。腎不全になることで、生命維持のために週3回、1回4時間ほどの人工透析が必要になります。
日本で透析を始める原因疾患の第1位が、糖尿病腎症です。(※2)腎臓は一度悪くなると回復が難しいため、定期的な尿検査で早期発見に努めることが大切です。
③糖尿病神経障害
糖尿病神経障害は、高血糖によって神経が傷つき、手足のしびれや痛み、感覚の低下などが起こる合併症です。進行すると足の壊疽(えそ)や切断のリスクもあります。
高血糖が続くと、神経に栄養を送る細い血管が傷ついて血流が悪くなり、余分な糖が神経細胞そのものに負担をかけます。全身に張り巡らされた神経がダメージを受け、特に手足の先の末梢神経から症状が現れることが多いです。
主な症状には、以下のような多様な感覚異常があります。
・手足の先が「ジンジン」「ピリピリ」としびれる
・足の裏に薄い紙が貼りついたような違和感がある
・針で刺されるような鋭い痛みが出ることがある
・痛みや熱さを感じにくくなる(感覚が鈍くなる)
上記のなかで特に危険なのは、痛みや熱さを感じにくくなる感覚低下です。小さな切り傷や火傷をしても気づきにくいため、傷口が悪化しやすくなります。気づかないうちに傷が進行して感染から組織が腐る壊疽へと進み、足の切断が必要になることもあります。
糖尿病神経障害で内臓の働きを調整する自律神経が障害されると、立ちくらみや便秘、下痢、排尿障害などの症状も出るでしょう。
糖尿病になりやすい人の特徴
糖尿病になりやすい人の特徴は、以下の3つです。
- 家族が糖尿病になったことがある人
- 肥満体型や運動不足の人
- 喫煙習慣や過度なストレスがある人
家族が糖尿病になったことがある人
家族に糖尿病の人がいる場合、遺伝的な体質によって糖尿病になる可能性が高いです。
糖尿病は生活習慣の影響が大きい病気ですが、遺伝による体質も発症リスクに大きく関わります。ご家族や血縁の近い親族に糖尿病の方がいる場合、以下の体質を遺伝として受け継いでいる可能性があります。
・すい臓の働きが元々弱く、インスリンを十分に分泌できない
・インスリンが効きにくい
片方の親が2型糖尿病の場合、子どもが糖尿病になる可能性は約2〜3倍、両親ともに2型糖尿病の場合は約3〜4倍に高まるとの報告もあります。(※3)ただし、遺伝的な要因があるからといって、必ず糖尿病になるわけではありません。
肥満や運動不足、ストレスなど生活習慣の要因が重なることで、糖尿病を発症しやすくなります。ご家族に糖尿病の方がいる場合は、健康的な生活を意識し、定期的に健康診断を受けることが大切です。
肥満体型や運動不足の人
肥満や運動不足は、糖尿病の発症リスクを大きく高めます。特に、ウエスト周りが大きくなる内臓脂肪型肥満は、糖尿病の危険因子の一つです。増えすぎた内臓脂肪は、インスリンの働きを邪魔し、インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)を引き起こします。
インスリンが効かない状態になると、すい臓は血糖値を下げようと、さらに多くのインスリンを分泌します。しかし、過重労働の状態が長く続くと、やがてインスリンを作るすい臓の細胞が疲弊し、十分なインスリンが分泌できません。これが、2型糖尿病が発症するメカニズムの一つです。
運動不足も糖尿病リスクを大きく高めます。理由は、大きく分けて以下の2つです。
・運動不足になるとブドウ糖が使われず、血液中に糖が溜まりやすくなる
・運動習慣がないと、インスリン抵抗性が進みやすくなる
BMI(体格指数)が25以上の方は肥満に分類され、糖尿病リスクが高まります。食事の見直しや軽いウォーキングなど、無理のない範囲で始めてみることが大切です。
喫煙習慣や過度なストレスがある人
喫煙や慢性的なストレスは、血糖値を上げ、インスリンの働きを悪化させるため、糖尿病リスクを高める要因です。
ある研究では、喫煙者は非喫煙者より糖尿病の発症リスクが約1.4倍高いと報告されています。(※4)タバコに含まれるニコチンなどの有害物質が、以下の2つの経路で血糖コントロールを乱すことが原因です。
・ニコチンがインスリン抵抗性を高め、インスリンの効きを悪くする
・交感神経を刺激し、アドレナリンなど血糖上昇ホルモンの分泌を促す
強いストレスが慢性的に続くと、体は常に緊張状態になり、コルチゾールやアドレナリンなどのホルモンが分泌され続けます。これらのホルモンには血糖値を上げる働きがあるため、慢性的なストレスは高血糖を招きやすくなります。
ストレスが原因で暴飲暴食をしたり、お酒の量が増えたりすることも少なくありません。生活習慣の乱れも、間接的に糖尿病のリスクを高める大きな原因となります。糖尿病を予防するには、自分なりのストレス解消法を見つけ、心と体のバランスを整えることが大切です。
糖尿病の検査・診断方法
糖尿病の診断は、主に血液検査と尿検査の客観的な数値にもとづいて行われます。ここでは、糖尿病の診断で中心となる検査方法と、受診を考えるべきタイミングを解説します。
血液検査
血液検査は、糖尿病の診断で特に重要な検査です。血糖値や過去の血糖状態を調べることで、糖尿病かどうかの診断を確定させます。
主な血液検査の項目は、以下のとおりです。
| 検査項目 | 検査内容 | 糖尿病が疑われる基準値(※5) |
| 空腹時血糖値 | ・10時間以上の空腹状態で測定 ・食事の影響を除いて、体の本来の血糖コントロール能力を評価できる |
126mg/dL以上 |
| HbA1c(ヘモグロビンA1c) | ・過去1〜2か月の平均血糖値を反映 ・食事の影響を受けず、信頼性が高い 6.5%以上 |
6.5%以上 |
| 随時血糖値 | ・食事時間に関係なく、来院時に測定 ・喉の渇きや多尿などの症状を伴い200mg/dL以上なら、1回の検査で糖尿病と診断されることもある |
200mg/dL以上 |
上記の検査結果を総合的にみて、医師が診断を下します。例えば、別の日に測定した空腹時血糖値とHbA1cの両方が基準値を超えている場合などは、1回の採血で診断が確定することもあります。
尿検査
尿検査は、血液検査とあわせて行われることが多く、体内の状態を知るための大切な検査です。尿検査だけでは糖尿病の確定診断はできませんが、高血糖によって体にどのような影響が出ているかを把握できます。
尿検査の主な項目は、尿糖と尿ケトン体です。血糖値が約160mg/dLを超えると、腎臓でブドウ糖を再吸収しきれなくなり、尿糖が現れます。(※6)尿糖の陽性判定は高血糖状態を示す症状ですが、尿糖が出ているからといって糖尿病とは限りません。
尿ケトン体は、インスリンが極端に不足し、体がブドウ糖をうまく使えなくなったときに増える物質です。脂肪を分解してエネルギーを作る過程で生じるため、尿ケトン体が陽性の場合は、体が深刻なエネルギー不足に陥っています。放置すると、命に関わる糖尿病ケトアシドーシスにつながる可能性があります。
医療機関を受診すべき目安
糖尿病は初期症状がほとんどないまま進行するため、少しでも気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。放置すると気づかないうちに進行し、深刻な合併症を引き起こす可能性もあります。
医療機関を受診すべき目安の症状は、以下のとおりです。
| 状況 | 具体的な症状 |
| 特徴的な症状がある | ・異常に喉が渇き、水分摂取量が増えた ・トイレの回数や尿量が増えた ・食べているのに体重が急に減った ・十分寝ても疲れがとれず、常にだるい |
| 健康診断で異常を指摘された | ・「血糖値が高い」「HbA1cが高い」と言われた ・空腹時血糖値が126mg/dL以上 ・HbA1cが6.5%以上 ・「糖尿病の疑い」「境界型(予備群)」と判定された |
| 糖尿病のリスクが高いと感じる | ・家族(両親・兄弟姉妹)に糖尿病の人がいる ・BMI25以上で肥満気味、運動不足 ・高血圧や脂質異常症を指摘されている |
上記の状況に当てはまる場合は、自己判断せずに内科や糖尿病内科の医師に相談しましょう。症状がないから大丈夫と過信せず、健康診断の結果や体のささいな変化に注意を払うことが大切です。早期発見、早期治療が将来の健康を守ります。
まとめ
糖尿病は「サイレントキラー」と呼ばれるように、自覚症状がほとんどないまま静かに進行していきます。特に異常な喉の渇き、急な体重減少、手足のしびれなどは、見過ごしてはいけない症状です。
健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘された場合も、自己判断で様子を見るのは危険です。放置すれば、糖尿病網膜症や糖尿病腎症、糖尿病神経障害などの深刻な合併症につながる恐れがあります。
早期発見、早期治療こそが、将来の重大な合併症を防ぎ、健康な日常を守る方法です。この記事を読んで、症状に心当たりがあった方は、内科や糖尿病内科を受診し、早めの専門医への相談が大切です。
参考文献
- Matoba R, Morimoto N, Kawasaki R, Fujiwara M, Kanenaga K, Yamashita H, Sakamoto T, Morizane Y.A nationwide survey of newly certified visually impaired individuals in Japan for the fiscal year 2019: impact of the revision of criteria for visual impairment certification.Jpn J Ophthalmol,2023,67(3),p.346-352.
- 一般社団法人日本透析医学会:「わが国の慢性透析療法の現況(2023 年 12 月 31 日現在)」.
- 一般社団法人日本内分泌学会:「2型糖尿病」.
- 厚生労働省:「喫煙と糖尿病」.
- 一般社団法人 日本糖尿病学会:「糖尿病診療ガイドライン2024」.
- 公益社団法人 日本薬学会:「薬学用語解説」.

